松本:6年生のスタート時期の成績と入試の日の成績は違います。ある程度我々も予測しますが、子どもによって成績の伸び方も違うので、偏差値も幅を持たせて3~4校見て検討してもらうようにしています。そうしているうちに保護者の方もイメージが湧いて学校の名前が具体的になってきます。
星野:懇談では学校の説明会で見て聞いてきたことをなるべく話すようにしています。スポーツが好きならここ、英語が好きならあそこが力を入れている、など具体的にお伝えすることで保護者の方もイメージが膨らみやすいようです。
京谷:実際に学校を見てきた子どもが「この学校楽しそう、行きたい」ということがありますが、それは子どもにとって楽な学校である場合も。何に惹かれて、何を基準にして行きたいと言っているのかは大人が見極める必要があるので、注意するよう保護者にお伝えしてますね。
松本:好みの制服など、子どもは表面的にしか見えていないことが多いですからね(笑)。「成長できそうだから」「ここを伸ばしてくれそうだから」というような志望理由を子どもから聞くとうれしくなります。
京谷:とある生徒が志望校の成績に届かず、「安全圏の学校にしようかと思う」と親子で相談を受けに来たことがありました。でもその表情や話し方はどうもすっきりしていなくて…。
星野:偏差値を見て不安になり、弱気になってしまっていたんでしょうね。
京谷:「何を言ってるんだ、一番行きたいのはどこか?」と問うと子どもは「行きたいのはこっち(第一志望校)」と言ったんです。試験まであと2カ月、「先生も一個一個答案用紙をみて、どこで点数を伸ばせるかきっちりやるから、逃げてはいけない」というと、泣きながら「がんばる!」と言い、隣でお母さんも泣き出し「本当に行きたいのは難しい方だってことを聞けてよかった。私も覚悟が決まりました」と言われました。結果は無事合格! 先日も一緒に受かった子たちと遊びにきてくれました。合格にプラスして、「この学校行って本当によかったです」と直接何年後かに聞けるのはうれしいですね。
松本:私も「第一志望校以外なら行かない」と強い決意を持っている生徒がいました。しかし結果は不合格。彼女は受かった違う学校に行くか公立に行くか悩んでいたので、「今まで頑張ってきたことを踏まえて、次のステージに行こう。受かった学校は自分をスカウトしてくれているということ。その中でトップを目指そう」と伝えたんです。すると彼女はなんと入学後たった1年でその学校の中のトップコースへ登りつめたんです。
京谷:それは感動的ですね!
松本:その子の妹も姉に影響を受けて、今では姉妹で通っているそうで。彼女からの「私この学校にいけて幸せです」という言葉が最高にうれしかったですね。
星野:お姉ちゃんの努力している姿が妹の心も動かしたんですね。中学校に入ってからも6年間心折れずに次の目標に進んでいけるような生徒を応援して指導をしたい。中学入試はゴールでなく通過点ですね。
京谷:志望校の順位はどうあれ、入学した時点でその学校が母校になりますからね。6年をどう過ごすかで、大人になったとき母校をどれだけ愛せたか、楽しめたかに変わる。
松本:だからこそ立志館の卒業生もよく遊びに来てくれているのではないかと。入った学校を悪くいう子はいないですからね。今行っている学校を愛しているし、誇りに思っているので、目がキラキラ輝いています。
京谷:私自身の中学入試は今から25年位前ですが、その時と今は違います。ずいぶん変わってきました。
松本:僕らがしていた時は詰め込み教育、成績主義時代のド真ん中。偏差値が少しでも高い方が良いとされていましが、偏差値ではなくそれぞれ進んだ学校が進むべき学校であると思います。
京谷:現に立志館のカリキュラムを見た中学入試を経験されている親御さんから「この勉強時間で足りますか?」と聞かれることも(苦笑)。私自身、当時は夜遅くまで何時間も勉強していましたが、成績はあまり伸びていませんでした。今は自分で吸収できる範囲を効率的に勉強するのが主流。足りているからこそ、もちろん合格率の結果にも出ています。
星野:勉強が嫌いになったら意味がないと思うんですよ。昔は学校のあと塾で勉強している子はかわいそうだと勝手に思っていました。でも自分が教えるようになって、全然違うことを知りました。学校とはまた違う世界で、知らないことをたくさん教えてもらえて高度な内容の勉強ができる。生徒と話していると「勉強は楽しい」という声が非常に多いです。
松本:少子化の影響もありますが、どの私立中学校もお互いに刺激し合いながらどんどん変化していってますしね。なんでも本物志向で、大学の研究室から買ってきたもので生徒が標本を造ったり、ネイティブの先生がいて留学の必要がないような環境だったり…。“この学校でどんなことができるか”が学校選びの鍵になっている気も。
星野:ここ2~3年は特に変わってきている印象ですよね。私立中学校の説明会へ伺い直接話を聞いていると、私たちが行きたくなります(笑)。
一同:本当に行きたくなります!
京谷:2020年の大学入試ではセンター試験が変わります。アクティブラーニングといって、答えが一つでないものを取り入れていく考え方が増え、教育そのものの仕組みが変わってきているように思います。
松本:色々ありますが、受験において大切なのは我慢強さだと思います。中学入試って小学生の一番遊びたいときに、友達が公園とかで遊んでいるなか、長時間勉強しに来る。それって我慢であって、心をタフにします。また勉強している中で越えれない壁が出てきますが、そこでどうするか子どもが考ます。大人が口を出さず、自分で考えさせることで成長にも繋がるのが中学入試の魅力の一つだと思います。
京谷:中学や高校へ入る前に「僕は、私はこれをがんばった」と言えるものを一個見つけられるというのは大きな財産。「一つのものに熱中するのはこの感覚なんだ」というものを、勉強を通して僕らは教えています。
星野:誰でも苦手なことはありますが、子どもたちは苦手なことを捨てないで自分の中でなんとか工夫して、得意なことは磨いていってます。みんなそれぞれ自分に目標を持って戦っている。立志館を見ていると、他人と戦っている子はいない気がします。
松本:ライバル視するなど、ギスギスした雰囲気は全くないですね。受験はよく周りはライバルだとか戦場だとか比喩されますが、私も「敵はいない、いるとしたら自分の中にいる弱い自分だから、それに勝つように」と指導しています。
京谷:お互いに応援しながらがんばろうという立志館での合言葉は「みんなで合格しよう」です。友達を蹴落とさなくても自分が合格点をクリアしたら合格できるわけで、決して一つの椅子を取り合うわけじゃないですからね。
京谷:基本的に3年生以上は入塾テストを受けてもらいます。現時点の小学校で習っているものを出題しているので、7割くらい取れたら合格。普段学校で80点、90点をとっている子なら立志館の授業はついてこれるはずです。
星野:テストをしてもらうと、自分はどこができていないかというのが分かってもらえるんです。学校のテストは今やっていることしかしないので、忘れちゃっていることも多い。テストを経験するだけでも得るものはあると思います。
松本:同じ90点を取った子たちでも、答案用紙を見ると全然違うことがあります。綺麗に書く子もいれば、たくさん計算を書き込んでいる子も。点数を見るだけではなく、悪いクセなどがある場合は補足で必ずアドバイスするようにしています。丁寧にする習慣をつけてノートがとれるように、勉強に追加してそういった面での指導もさせてもらいます。
京谷:点数的には不合格でも、失点部分を見て明らかな勉強不足の部分があればそれをお伝えして再テストを受けてもらうことも。入塾テストを受けることは不安だと思うんです。連絡をいただけたら「こういう勉強をしておいてくださいという」アドバイスはできるので、1週間でもそういう練習をしてもらってチャレンジしてもらうのは大歓迎です!